正直読書

本のこと、日常のこと。司書の勉強中。

シリーズで一番地味かもしれない「冷たい密室と博士たち DOCTERS IN ISOLATED ROOM」

冷たい密室と博士たち (講談社文庫)作者:森 博嗣発売日: 1999/03/12メディア: 文庫SMシリーズ2作目。 正直、謎解き自体はシリーズの中で一番地味だと思っている。 前作の「すべてがFになる」で「うおおおお最高!」となった人が、今作で「あれ…やっぱいいか……

言葉の羅列から浮かび上がるもの 「好き好き大好き超愛してる。」

好き好き大好き超愛してる。 (講談社文庫)作者:舞城 王太郎発売日: 2008/06/13メディア: 文庫初・舞城王太郎。 言葉の羅列・羅列・羅列で圧倒されるが、 目が滑ることがないのが舞城王太郎の凄いところなんだろう。 何だろう、謎の圧迫感がある。 「俺の文章…

え、そういう話?でも読み進める手が止まらない!「三体」

SF

三体作者:劉 慈欣発売日: 2019/07/04メディア: ハードカバー何かと話題の本。 思っていた話とちょっと違ったけど、それでも魅力あふれるSFだ。 個人的には、謎の実験施設とか怪奇現象の裏に、もっと人間の狂気みたいなのがあると良かった。 それこそ冒頭の文…

第43回アロマテラピー検定(AEAJ)を受験してました。

11月1日にアロマテラピー検定を受験し、1・2級合格しました。 勉強期間は6月からなので5ヶ月程度、毎日30分程勉強していたが、正直1ヶ月頑張れば間に合うような気がするというのが私の見立てです。ちなみに今回はリモート開催だったので、自宅でパソコ…

原点にして頂点「すべてがFになる THE PERFECT INSIDER」

すべてがFになる (講談社ノベルス)作者:森 博嗣発売日: 1996/04/03メディア: 新書いやぁ、最高でした。犀川先生と萌絵ちゃん最高。可愛い。 二人の結婚式いつですか? 殺人事件に関するミステリーパートと、犀川先生と萌絵ちゃんのイチャイチャパートが交互…

K-popの世界に足を踏み入れた話

K-popにハマっている。 虹プロジェクトにハマった女の末路に相応しい姿である。 虹プロ以外でK-popを聞いたのは、Twiceの「Feel Special」が始まりだった。 虹プロ最終韓国合宿のミッションで使われていた曲で、推しのミイヒちゃんをはじめ、メンバー全員が…

大震災と多重人格者が織りなす異色ホラー「十三番目の人格(ペルソナ)―ISOLA」

十三番目の人格(ペルソナ)―ISOLA (角川ホラー文庫)作者:貴志 祐介発売日: 1996/04/18メディア: 文庫阪神淡路大震災で被災した多重人格者の女子高生・千尋と、エンパス(人の感情を深く読み取る能力を持つ人)である由香里が出会い、千尋に宿ってしまった邪悪…

色褪せないハードボイルド小説の名作「不夜城」

不夜城 (角川文庫)作者:馳 星周発売日: 1998/04/23メディア: 文庫新宿歌舞伎町を舞台に、中国人のヤバい奴らがなんやかんやする物語である。 というふうに説明すると、ちょっとキャッチーにも見えるが、実際は絶望の連続。バイオレンスアンドバイオレンス。 …

「ファン即ち献身」という気づきをNiziUから得た

虹プロジェクトから始まり、NiziUのファンことWithUとなった女が日本に何百億人いるだろうか。 その何百億分の1が私である。 実は、私は今までアイドル的な存在のファンになったことがない。 ハロプロもジャニーズもAKBもLDHも何もかも、素通りしてきた。 …

嘘から始まる愛の物語「嘘」

嘘作者:北國 浩二発売日: 2011/07/09メディア: 単行本(ソフトカバー)真っ赤な嘘、真っ白な嘘。「嘘」という概念に色付けをした人は、どうして嘘を色で区別したのだろう。 この本の登場人部は、実に様々な嘘をつく。 保身のため。大切な人を守るため。本心…

ちょっと欲求不満なスパイミステリー「ジョーカー・ゲーム」

ジョーカー・ゲーム (角川文庫)作者:柳 広司発売日: 2011/06/23メディア: 文庫本当に何も他意はないが、一言で表すと「大衆向けミステリー」。 こう書くと貶しているような感じがする気がする…。 じゃあ何だ、「一般向け」?いや、なんか「私、玄人なので」…

ワイン知識が手軽に確実に!「マンガで教養 やさしいワイン」

マンガで教養 やさしいワイン発売日: 2016/11/07メディア: 単行本今まで紹介していた本とはちょっと趣向が違うけど、良い本なので。 「やさしい」と言いながら、必要な知識をインプットしてくれる本格派だ。 例えば、ちょっとお洒落なレストランでワインを頼…

おいぬ、Kindleを買う

いくつかのサイトを斜め読みして、初心者にはKindle Paperwhiteというのがおすすめなようだという結論に至ったので購入。 防水機能がついているので、憧れのお風呂読書もできる。 画面保護フィルムと一緒に注文。 ずっと気になっていたものの、「まあいいか……

森博嗣のオシャレ小説 シリーズ1作目「ゾラ・一撃・さようなら」

ゾラ・一撃・さようなら (集英社文庫)作者:森 博嗣発売日: 2010/08/20メディア: 文庫森博嗣のオシャレ小説。 「暗闇・キッス・それだけで」の前の物語である。 oinusamausagisama.hatenablog.com読み終えた率直な感想としては、2作目の方が面白い。 人物の…

軽妙で心地よい森博嗣の世界「暗闇・キッス・それだけで」

暗闇・キッス・それだけで作者:森 博嗣発売日: 2015/01/26メディア: 単行本 森ワールド全開。 これを読んで良いと思ったらきっと他の作品も気に入るだろうし、ダメだったらこれ以上森博嗣を読むのは止めたほうが良い。 タイトルに惹かれて読んでみたのだが、…

平成1ケタ生まれ、おいぬ、「82年生まれ、キム・ジヨン」を読む

82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)作者:チョ・ナムジュ発売日: 2018/12/07メディア: 単行本(ソフトカバー) はじめに 訳者である斎藤真理子氏が本作を的確に表しているので、まずはその部分を紹介する。 一冊まるごと問題提起の書である。カルテではあるが…

未知なるものとの出会いを描く「妊娠カレンダー」

妊娠カレンダー (文春文庫)作者:小川 洋子発売日: 1994/02/10メディア: 文庫「妊娠カレンダー」「ドミトリイ」「夕暮れの給食室と雨のプール」の3編が収録されている。 どれも読みやすく、面白い。 ざっくりとしたあらすじ 「妊娠カレンダー」 妊娠した姉を…

話題の本を読んでみた「文豪たちの悪口本」

文豪たちの悪口本発売日: 2019/05/28メディア: 単行本 何だ、おめえは。青鯖が空に浮かんだような顔をしやがって 初対面の太宰治に対し、中原中也が言い放った言葉。 本書は、伝聞・書簡・日記・新聞などなど、ありとあらゆる文献を洗って文豪たちがどんな悪…

優しくて美しくて悲しい 「猫を抱いて象と泳ぐ」

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)作者:小川 洋子発売日: 2011/07/08メディア: 文庫 だいたいこういう話 ・見た目にコンプレックスを抱く少年がチェスに出会う。 ・師の導きにより才能が開花した少年は「盤下の詩人」と呼ばれ、数多くの対局を行う。 ・チェスは…

混乱を乗り越えて奏でる「ハーモニー」とは何か

SF

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)作者:伊藤 計劃発売日: 2010/12/08メディア: 文庫「何か」というタイトルにしておきながら、それに対する答えは特に用意していません。前作「虐殺器官」に引き続き、SF超大作である本作を紹介したいと思います。がっつりネタバレ…

伊藤計劃「虐殺器官」についてざっと語る

SF

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)作者:伊藤 計劃発売日: 2010/02/10メディア: 文庫本書の経歴を紹介しましょう。 日本の長編SF小説。伊藤計劃のデビュー作品である。2006年、第7回小松左京賞最終候補。2007年発表。「ベストSF2007」国内篇第1位。「ゼロ年代SFベス…

横溝正史「八つ墓村」を改めて読んでみた

八つ墓村 (角川文庫)作者:横溝 正史発売日: 1971/04/26メディア: 文庫横溝正史の金田一耕助シリーズで最も有名な「八つ墓村」を改めて読んでみました。何となく、他の作品と比べてなんか地味だな…と、あまり良い印象を持っていなかったのですが、ちゃんと読…

斬新なエンタメミステリー。イッキ読み注意。「屍人荘の殺人」

屍人荘の殺人作者:今村 昌弘発売日: 2017/10/12メディア: 単行本 第27回鮎川哲也賞を受賞し、その翌年に早くも映画化され話題になった本作。私は本作を映画化されるタイミングで知りましたが、宣伝方法や主題歌からして、「本格ミステリー」ではないのかな…

文系女が数学ノンフィクション「フェルマーの最終定理」に挑んだ結果。

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)作者:サイモン シン発売日: 2006/05/30メディア: 文庫結果、数年越し2度目の敗北でした。 1度目の敗北は、大学4年の冬。就職先が決まり、就職活動は終わり。大学の授業はほぼ無い。卒業論文も完成している。「人生の夏休…

緻密なハードSF!名作!「Ank: a mirroring ape」

SF

Ank: a mirroring ape作者:佐藤 究発売日: 2017/08/23メディア: 単行本 何か力強い渦のようなものに巻き込まれて抜け出せないような感覚。こうした文章を書く人はそういない。才能です。伊藤計劃を初めて読んだときのような胸の高まりを感じました。 少し暴…

金田一耕助シリーズの推しヒロインを紹介したい――「女王蜂」横溝正史

突然ですが、横溝正史の金田一耕助シリーズってどれくらい知名度があるんでしょうか。「犬神家の一族」のVの字の足とか、「八つ墓村」の白装束とか、サイコスリラーのイメージが強いでしょうか。それとも「じっちゃんの名にかけて!」の方が有名なんでしょ…

現代版「藪の中」は気味悪さ・後味悪さが絶妙!「ユージニア」恩田陸

ユージニア (角川文庫)作者:恩田 陸発売日: 2008/08/25メディア: 文庫この小説を読んでいて、芥川龍之介の「藪の中」を連想した方は多いのではないでしょうか。 私は文庫本を読んだのですが、本の帯に「誰が真実を話したの?」というキャッチフレーズが付け…

攻略方法あります。(たぶん)「ノルウェイの森」

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)作者:村上 春樹発売日: 2004/09/15メディア: ペーパーバック私の少ない読書遍歴の中に村上春樹が加わりました。ふーん、おもしれえ本。というのが読後の感想です。とはいえ、「村上春樹は好き嫌いが分かれる」というのもよく…

緻密に作り込まれた世界観に圧倒される――『新世界より』

新世界より(上) (講談社文庫)作者:貴志 祐介発売日: 2011/01/14メディア: 文庫>> 1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖(かみす)66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄(しめなわ)で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入するこ…

創作が溢れる現代に改めて読みたい――『そういうふうにできている』

そういうふうにできている (新潮文庫)作者:さくら ももこ発売日: 1999/06/30メディア: 文庫>> この腹の中に、何かがいるのである。大便以外の何かがいる…!テスターによるショーゲキの妊娠発覚、どん底でバカバカしいギャグを考えてた悪阻期、悪魔の封印石の…