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森博嗣のオシャレ小説 シリーズ1作目「ゾラ・一撃・さようなら」

ゾラ・一撃・さようなら (集英社文庫)

ゾラ・一撃・さようなら (集英社文庫)

  • 作者:森 博嗣
  • 発売日: 2010/08/20
  • メディア: 文庫

森博嗣のオシャレ小説。
「暗闇・キッス・それだけで」の前の物語である。
oinusamausagisama.hatenablog.com

読み終えた率直な感想としては、2作目の方が面白い。
人物の深みが増したというか、赤座都鹿と水谷優衣がより良い女になっているし、事件の行方もスッキリする。
また、この本を読んでいてもいなくても、「暗闇・キッス・それだけで」の理解度は変わらない。

ということを先に述べた上で、本書について書いていこうと思う。

頸城探偵の仕事ぶりについて

2作目と同じく、事件解決のモチベーションは女性。
本作のヒロインは志木真智子という、頸城よりも1回り若い美女で、事件の依頼人である。

ネタバレしてしまうと、彼女が事件の犯人格になるのだが、読んでいれば割と早い段階で気付くことができる。


頸城が真相に辿り着くのは物語終盤で、「驚愕」みたいなリアクションを取るのだが、「いやいや、こんな近くにいて気付かなかったんかい!」とツッコミを入れたくなる。
人間として魅力的な頸城だが、探偵としてはまだまだのようだ。

2作目ではもう少しその部分に磨きがかかっているので、探偵としての頸城を見たいのなら2作目をおすすめする。
まあ、2作目もそんなに探偵してないけど…

ミステリーとして読まないほうが良いのかも

志木真智子が犯人だと推測できるのは、物語の途中に犯人らしき人物の独白があるためだ。
これを読むと大体犯人が分かってしまう。
まあ、これを読まなくても、状況やら色々考慮してアタリがついてしまうのだけど。
なので、頸城が最後まで犯人に気付かないのにモヤモヤしてしまう。


だが、犯人が分かったところで、色々と「え、なんで?」という気持ちが残る。
なぜこんな回りくどいやり方で殺人を犯したのか?という部分も、そもそも頸城を雇ったのはなぜか?というところから謎のまま。

という訳でミステリー小説としてはあまりすっきりしない結末になるので、「暗闇・キッス・それだけで」同様、オシャレ小説として読むのが正解だと思うことにした。

一応断っておきます。私は森博嗣のファンです。作品を否定するものではありません。決して。。

蛇足:素敵な文章があったので紹介、など

森博嗣の小説には、必ず1つは心に刺さる素敵な一文がある。

綺麗な思い出って何だろう?
思い出は、どれも無色だ。あとから色を塗って、綺麗にするか、それとも汚くするか、そのいずれかだろう。

こういう文章がさらっと出てくるのが森博嗣の小説の特徴だ。
それも、感動的な場面とかではなく、ちょっとした世間話の中に入れ込んでいるものが多い。ある意味不意打ち。



もう1つ。
事件に直接関係がある訳ではなかったが、本作にはSMシリーズに出てきた人物が登場する。
また、事件のきっかけになった芸術品がVシリーズに登場しているらしい。

SMシリーズ、Vシリーズとは、森博嗣によるサイコーなゴキゲン小説シリーズである。


両シリーズとも、私が学生の頃読んだきりでおぼろげな記憶しかない。
Vシリーズに至っては、3作目までしか読んでいない。
金銭的に余裕のなかった学生時代に読んだ本はほとんど図書館本で、そもそも手元にない。
そもそも四季シリーズ読むには復習が必要なんだよなあ。(この間「四季 春」読んだら訳が分からなかった)


・・・・・・・買うか。



といっても、両シリーズ集めると20冊になってしまうし、「スカイ・クロラ」シリーズもせっかくだからもう一度読みたい。
ベッドで読みたいから中古はちょっと嫌だし(図書館本は何だか許しちゃう。なぜか。)、というかお風呂で本読むの、夢だったんだよなあ。





・・・・・・・Kindle、買うか・・・・・・・。


という訳で、次回「おいぬ、Kindleを買う」
お楽しみに。