正直読書

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え、そういう話?でも読み進める手が止まらない!「三体」

三体

三体

  • 作者:劉 慈欣
  • 発売日: 2019/07/04
  • メディア: ハードカバー

何かと話題の本。
思っていた話とちょっと違ったけど、それでも魅力あふれるSFだ。


個人的には、謎の実験施設とか怪奇現象の裏に、もっと人間の狂気みたいなのがあると良かった。
それこそ冒頭の文化革命のシーンのような、身の毛もよだつ人間のドス黒いところを見たかった。


まあ面白いから良いんだけどさ。


また、思っていたよりも文章が読みやすいのも意外だった。
これは作者の劉慈欣というよりも、訳者の方の文章能力によるものかもしれない。

↓とても参考になる記事。
withnews.jp


なお、文章の読みやすさについて「思っていたより易しい」と評価したが、決して「易しい」訳ではないのでご留意いただきたい。

登場人物の多くが科学者で、数学や天文学の問題解明がキーとなっており、私のような文系人間を試す言葉の羅列が続く。


勿論「全部すべてまるっと」理解できる訳もなく、「ちょっと何言ってるか分からない」と心の中で呟きながら読んでいた。


物語のテンポが良い分、あまり気にせず読み進めることができるが、それでも問題の核心を理解しないまま物語が進むのは少し寂しい。
文系人間がSFを読む時の永遠の課題と言えるかもしれない。私だけかもしれない。


それにしても、何度も登場するVRゲーム「三体」の世界観が面白い。
天候が不安定な世界で、いかに文明を築くか、また気候変動の謎を解くかというのがゲーム「三体」の目的だ。

ゲームオーバーすると文明が滅びるという斬新なバッドエンドが待っているが、それ以上に独特なのが、ゲーム内の人間が「脱水する」ことだ。


現文明が滅び、次の文明が誕生した際に再生できるよう、体から水分を抜いた状態で倉庫に収まるのだ。
作中では、脱水した人間を「干し椎茸」と表現している。


それまで非常にシビアな描写が続いていただけに、「え、これ…これ笑っ………笑って…いいの……?」と、誰かに伺いを立てたくなってしまったのだが、どう考えても面白かったので一人で笑ってしまった。


ニュートンフォン・ノイマン始皇帝に「計算陣形(コンピュータ・フォーメーション)!」と言わせた場面も良かった。ちゃんとルビを振っているところ拘りを感じる。


VRゲーム「三体」には、歴史上の人物が登場するが、始皇帝ニュートンノイマンの共演からも分かるように、設定は限りなくゆるふわである。

たちの悪い悪夢をゆるっと見ているような、奇妙な世界観が繰り広げられる。



ここまで書いておいてあれだが、一作目の「三体」はまだまだ序章に過ぎなかった。
ハリーポッターで言えば、ハリーがホグワーツ特急に乗ったところまで。
まだまだ続く。