文系女が数学ノンフィクション「フェルマーの最終定理」に挑んだ結果。
- 作者:サイモン シン
- 発売日: 2006/05/30
- メディア: 文庫
結果、数年越し2度目の敗北でした。
1度目の敗北は、大学4年の冬。
就職先が決まり、就職活動は終わり。大学の授業はほぼ無い。卒業論文も完成している。
「人生の夏休み」が終わりに差し掛かったところで、読書に再び専念できる。
時間をたっぷり使って読み応えのあるものを読もうと本書を買ったものの、全く歯が立たず。
それもそのはず。私は理数系アレルギー。故に文系。
中学校の数学・理科で躓き、「理数系がもう少し出来れば…」という言葉を何百回聞いたことか。
本書は、フェルマーの最終定理を証明した天才学者ワイルズの紹介をした後、紀元前六世紀に遡り、数学がどのように生まれたのかを辿っていきます。
その過程でフェルマーの最終定理が生まれるのですが、そこに辿り着くまでにそこそこ距離がある。
また、最終的にワイルズが証明するまでの330年間、多くの数学者がフェルマーに挑戦し、敗れていきました。
数学者がどのような人物だったか、どのように挑んだのか、その結果得た新たな知見など、詳細なエピソードが次から次へと出てきます。
それらは素晴らしい歩みだったのだけれども、大学4年の私は旅の途中で息絶えてしまったのでした。
それから数年が経ち、ステイホームで時間がある今がチャンス!と意気込んだわけですが、やはり読むのが辛かった。
数学者たちのエピソードは総じて面白いです。
数学に疎い読者にも理解がしやすいように、平易な言葉で数学を説明していることが良く分かります。
一応、私も内容を追うことが出来たので。
けれども、書いてあることに全くと言っていいほど興味が持てなかった。
本書に対するモチベーションを保つことが出来ず、最後にはその火が消えてしまいました。
そうして最後のページをめくったときには、「やっと他の本が読める!」と感じました。
敗北です。
確かに「フェルマーの最終定理」を読み終えたけれど、読書ってそういうことじゃないよなあと。
これは完全に私見ですが、難しい本を読んだから偉いとか、名著は読まないといけないとか、読んだ本の数が多いほうがいいとか、読書ってそういうものじゃないと思っています。
また、今回学んだことは、(少なくとも私は)興味のない内容を一生懸命読み続けても何も得られないということです。
「フェルマーの最終定理」を書店で選び、読み始めた私は、この本は名著だから読まなきゃ、とか、数学的見地が身につくかもしれないという期待を持っていた訳ですが、その目論みは外れてしまいましたね。
という訳で、一応読破したけど不完全燃焼な形で本書を終えてしまいました。
ただ、本書が名作と言われる所以はよく分かりました。
ワイルズが証明を完成させた場面。これは数学に限らず、何か1つのことに一生懸命取り組むことの素晴らしさが伝わってきます。
なんて月並みな表現では伝わらないかと思いますが、本書を読んだ方は共感していただけるのではないでしょうか。
個人的な意見ですが、ベネディクト・カンバーバッチが主演の映画「イミテーション・ゲーム」や、インドの天才数学者シュリニヴァーサ・ラマヌジャンがモデルの「奇蹟がくれた数式」、また小川洋子さんの「博士の愛した数式」を見ておくと内容が少し身近なものに感じられるかと思います。