創作が溢れる現代に改めて読みたい――『そういうふうにできている』
- 作者:さくら ももこ
- 発売日: 1999/06/30
- メディア: 文庫
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この腹の中に、何かがいるのである。大便以外の何かがいる…!テスターによるショーゲキの妊娠発覚、どん底でバカバカしいギャグを考えてた悪阻期、悪魔の封印石のような強情な便との壮絶な戦い、と、期待にたがわぬスッタモンダの十月十日。そして、とうとう生まれたよ。あたしゃ、おかあさんになっちゃったよ。そう、まる子も人間、人間も宇宙の生命体、そういうふうにできている、のです。(「BOOK」データベースより)<<
ちびまる子ちゃんの作者による、妊娠・出産経験を綴ったエッセイです。
さくらももこのエッセイはいいぞ〜
はい。今はSNSの発達により、一般人でも自叙伝的な文章やマンガを簡単に公開することができて、こちらも色んな方の創作を見ることができる。良い時代ですよね。
そんな現代だからこそ読みたい、レベル段違いのプロエッセイです。
プロ、というのは勿論「作家・漫画家」としてさくらももこが評価されているというのもありますが、
私の中で「定型句」と(勝手に)呼んでいる単語が全く使われていないからなんです。
定型句とは、以下のような言葉を指します。
「尊い」「エモい」「控えめに言って最高」「死」「神」
何となく伝わるでしょうか。
すなわち、本来言葉が持つ意図を超えて、気持ちや状況を端的に表すために使われる言葉です。
こういう言葉を使うことで文章に笑いが生まれ、文章をきちんと読んでいなくても語り手が伝えたいことが大体分かるようになっています。
便利な一方で、その言葉の用途を知らない人には、全く違う意味で解釈されてしまう危険性を持ち合わせています。
「定型句」を用いない本エッセイは(「ホルモンバランスのせい」で)さくらももこの合理的とは言えない行動を面白おかしく綴ったものですが、誰にでも分かる公平な言葉を使うので、誰にとっても分かりやすく面白いのです。
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ここまでつらつらと持論を述べてきましたが、私の好きな話を1つご紹介したいと思います。
第5章「不安」で妊娠中に思う存分工作をする場面です。
「好きなことだけしていれば良いんだよ」という旦那さんの言葉を受けて、主にファミコンと工作をしていたという彼女。
(注意)このエッセイには、今では「嘘◯」と揶揄されてしまいそうな、お手本のような旦那さんが出てきます。
「楽しさ」だけを追求して何かを生み出す様子は、少し羨ましくなってしまうほど幸せそうです。
そういえば、「図工」の授業になると、作る前から目をキラキラさせていた友人がいたなあ。
私は図工があまり得意でなく、何か変なものを作ってしまったら恥ずかしいな、どうしたらある程度の成績が取れるかな、なんて悩みがつきものでしたが・・・(笑)
それでも文章を書くことは大好きで、こっそり小説を書いてみたり、みんが嫌がる読書感想文の宿題が楽しみだったりしていました。
社会人となった今、文章を作る機会といえばもっぱら事務メールや報告書。
自分の気持ちを素直に綴る楽しさをまた味わいたいなと思い、本ブログを始めたことを思い起こしました。
絵を書いたり、文章を書いたり、創作が好きだったけども今はすっかりご無沙汰・・・という方、あの時のキラキラした気持ちが蘇ること請け合いです。
この他にも面白い話が盛り沢山ですので、ぜひ手にとってほしいです。