正直読書

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斬新なエンタメミステリー。イッキ読み注意。「屍人荘の殺人」

屍人荘の殺人

屍人荘の殺人


第27回鮎川哲也賞を受賞し、その翌年に早くも映画化され話題になった本作。

私は本作を映画化されるタイミングで知りましたが、宣伝方法や主題歌からして、本格ミステリー」ではないのかな?という印象でした。

その直感はあながち間違っておらず、本作を読み終えた今になってみると、敢えてそういう見せ方をしたんだろうと思います。


私はどちらかというと「ミステリーにつまらん色恋沙汰はいらん!」「しょうもないギャグはいらん!」という過激派で、
あ、コレ好きじゃないヤツ…?と最初は思っていました。

だけど一瞬で読み終わりました。面白かった。

先入観っていけないですね。


主人公について

最初に「ウッ」ときたのは、主人公がコッテコテだったところ。

自称ホームズ、やれやれ系ワトソン、美少女探偵。

キャラが渋滞しちゃってるよ!誰か一人余計でしょ!

と思いましたが、この3人は必要な人数だったことが後に分かり、衝撃を受けました。


それから全ての場面が中村倫也神木隆之介浜辺美波で脳内再生されました。

特に浜辺美波は本当にはまり役。

天然美少女お嬢様探偵も浜辺美波だと思えば受け入れることができました。

「すべてがFになる」シリーズの萌絵ちゃんと犀川教授にも最初同じような感想を抱いたけど、結局愛着が湧いてシリーズ完走しちゃったもんね。慣れだね。
本当に個人的な意見ですが、(神木隆之介という先入観があるからでしょうが)葉村(ワトソン役)の一人称は「俺」でなく「僕」が良かったなあ。


本書の仕組みについて

少し残念だったのが、「ネタバレ厳禁」、「新しいミステリー」っていうのが強調されすぎて、読む前から仕組みを察してしまっていました。

そしてそのとおりだったことです。


あんな宣伝されたら、何となく勘付くような…。

それに加えて、誤って参考文献リストを開いてしまったことにより、完全に自己ネタバレに…。


だけどその仕組み自体は謎解きにあまり絡んでこないので、察してしまっても大丈夫でした。


クローズド・サークルが本作の特徴ですが、現代日本を舞台にすると、なかなか現実味を帯びません。

まず、連絡手段が途切れるってことがあまりない。

館の電話線が切られていても、みんなスマホ持ってるでしょって。


本作は読む人によっては「禁じ手」かもしれませんが、こうすれば成立するのかと納得させられました。

連絡手段が途絶えてしまった理由も「この状況下だったら仕方ないかも」となるし。

軽い総括

正直、犯人の動機は「それだけで?」となりました。

ただ、引っかかったところ(私の只の難癖)はその点だけで、トリックは良く出来ているなあと思いました。

普通こんな状況に陥って完璧な計画立てるなんてムリでしょ…と思っていたけど、そこもちゃんと回収されました。


軽く読み飛ばしてしまいそうになりましたが、そういう細かなところにもちゃんと目が行き届いている。

様々な要素を組み合わせながら、最後はきちんとまとまっていました。

作者の今村昌弘さんはバランス感覚が良いんでしょうね。


館の見取り図と登場人物一覧が最初についていて、ミステリー好きとしてはワクワクを禁じ得ませんでした。

また、審査員の加納朋子さんも指摘していましたが、
登場人物が多くなってきて少し焦りだしたタイミングで、浜辺美波こと美少女探偵が登場人物の整理をしてくれました。

非常にナイスなタイミングでした。親切。


色々な面で、枠にとらわれない斬新な作品でした。面白かった!

※映画は設定が若干違うみたいです。注意!