正直読書

本のこと、日常のこと。司書の勉強中。

2020-01-01から1年間の記事一覧

伊藤計劃「虐殺器官」についてざっと語る

SF

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)作者:伊藤 計劃発売日: 2010/02/10メディア: 文庫本書の経歴を紹介しましょう。 日本の長編SF小説。伊藤計劃のデビュー作品である。2006年、第7回小松左京賞最終候補。2007年発表。「ベストSF2007」国内篇第1位。「ゼロ年代SFベス…

横溝正史「八つ墓村」を改めて読んでみた

八つ墓村 (角川文庫)作者:横溝 正史発売日: 1971/04/26メディア: 文庫横溝正史の金田一耕助シリーズで最も有名な「八つ墓村」を改めて読んでみました。何となく、他の作品と比べてなんか地味だな…と、あまり良い印象を持っていなかったのですが、ちゃんと読…

斬新なエンタメミステリー。イッキ読み注意。「屍人荘の殺人」

屍人荘の殺人作者:今村 昌弘発売日: 2017/10/12メディア: 単行本 第27回鮎川哲也賞を受賞し、その翌年に早くも映画化され話題になった本作。私は本作を映画化されるタイミングで知りましたが、宣伝方法や主題歌からして、「本格ミステリー」ではないのかな…

文系女が数学ノンフィクション「フェルマーの最終定理」に挑んだ結果。

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)作者:サイモン シン発売日: 2006/05/30メディア: 文庫結果、数年越し2度目の敗北でした。 1度目の敗北は、大学4年の冬。就職先が決まり、就職活動は終わり。大学の授業はほぼ無い。卒業論文も完成している。「人生の夏休…

緻密なハードSF!名作!「Ank: a mirroring ape」

SF

Ank: a mirroring ape作者:佐藤 究発売日: 2017/08/23メディア: 単行本 何か力強い渦のようなものに巻き込まれて抜け出せないような感覚。こうした文章を書く人はそういない。才能です。伊藤計劃を初めて読んだときのような胸の高まりを感じました。 少し暴…

金田一耕助シリーズの推しヒロインを紹介したい――「女王蜂」横溝正史

突然ですが、横溝正史の金田一耕助シリーズってどれくらい知名度があるんでしょうか。「犬神家の一族」のVの字の足とか、「八つ墓村」の白装束とか、サイコスリラーのイメージが強いでしょうか。それとも「じっちゃんの名にかけて!」の方が有名なんでしょ…

現代版「藪の中」は気味悪さ・後味悪さが絶妙!「ユージニア」恩田陸

ユージニア (角川文庫)作者:恩田 陸発売日: 2008/08/25メディア: 文庫この小説を読んでいて、芥川龍之介の「藪の中」を連想した方は多いのではないでしょうか。 私は文庫本を読んだのですが、本の帯に「誰が真実を話したの?」というキャッチフレーズが付け…

攻略方法あります。(たぶん)「ノルウェイの森」

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)作者:村上 春樹発売日: 2004/09/15メディア: ペーパーバック私の少ない読書遍歴の中に村上春樹が加わりました。ふーん、おもしれえ本。というのが読後の感想です。とはいえ、「村上春樹は好き嫌いが分かれる」というのもよく…

緻密に作り込まれた世界観に圧倒される――『新世界より』

新世界より(上) (講談社文庫)作者:貴志 祐介発売日: 2011/01/14メディア: 文庫>> 1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖(かみす)66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄(しめなわ)で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入するこ…

創作が溢れる現代に改めて読みたい――『そういうふうにできている』

そういうふうにできている (新潮文庫)作者:さくら ももこ発売日: 1999/06/30メディア: 文庫>> この腹の中に、何かがいるのである。大便以外の何かがいる…!テスターによるショーゲキの妊娠発覚、どん底でバカバカしいギャグを考えてた悪阻期、悪魔の封印石の…

異常な患者になぜか共感してしまう?『イン・ザ・プール』

イン・ザ・プール (文春文庫)作者:奥田 英朗発売日: 2006/03/10メディア: 文庫>> 「いらっしゃーい」。伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。色白で太ったその精神科医の名は伊良部一郎。そしてそこで待ち受ける前代未…

素敵なものを「寄せ集め」て…『夢見る帝国図書館』

夢見る帝国図書館作者:京子, 中島発売日: 2019/05/15メディア: 単行本>> 本がわれらを自由にする。明治に出来た日本初の図書館と戦後を生きた喜和子さん。ふたつの物語は平成でひとつに―(「BOOK」データベースより)これ、本好きの心を擽りまくる秀逸タイト…

異色の良質ミステリー――『闇に香る嘘』

闇に香る嘘 (講談社文庫)作者:下村 敦史発売日: 2016/08/11メディア: 文庫>> 孫への腎臓移植を望むも適さないと診断された村上和久は、兄の竜彦を頼る。しかし、移植どころか検査さえ拒絶する竜彦に疑念を抱く。目の前の男は実の兄なのか。27年前、中国残留…

バイオレンスに浸かりたい人向け。――『独白するユニバーサル横メルカトル』

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)作者:平山 夢明発売日: 2009/01/08メディア: 文庫>> タクシー運転手である主人に長年仕えた一冊の道路地図帖。彼が語る、主人とその息子のおぞましい所行を端正な文体で綴り、日本推理作家協会賞を受賞した表…

リアルな隣国の姿――『現代中国「解体」新書』

現代中国「解体」新書 (講談社現代新書)作者:梁過発売日: 2011/06/17メディア: 新書たまにはこういうものも。今年は新型ウイルスが大流行し観光地の様子も例年とは異なるようですが、国内旅行をすると日本人よりも外国人のほうが多くて、「私はいつの間に海…

「空虚」を体現する精神科医――『心臓抜き』

心臓抜き (ハヤカワepi文庫)作者:ボリス ヴィアン発売日: 2001/05/01メディア: 文庫>> 内容(「BOOK」データベースより) 過去を持たず、空虚な存在として生まれた精神科医ジャックモール。その精神分析は、他者の欲望・願望を吸収して自己を満たすために施…

充たされないのは、一体誰?――『充たされざる者』

充たされざる者 (ハヤカワepi文庫)作者:カズオ イシグロ発売日: 2007/05/01メディア: 文庫 世界的ピアニストのライダーは、あるヨーロッパの町に降り立った。「木曜の夕べ」という催しで演奏する予定のようだが、日程や演目さえ彼には定かでない。ただ、演奏…

はじめまして。

はじめまして、おいぬと申します。 この間初めて仙台に旅行したときに食べたずんだ餅。美味しすぎて2人分平らげました。 首都圏在住、普通のOLです。 これまで読んだ本の備忘録として、また社会人になってから語彙力の低下が著しいので読書感想文ブログを開…