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リアルな隣国の姿――『現代中国「解体」新書』

現代中国「解体」新書 (講談社現代新書)

現代中国「解体」新書 (講談社現代新書)

  • 作者:梁過
  • 発売日: 2011/06/17
  • メディア: 新書

たまにはこういうものも。

今年は新型ウイルスが大流行し観光地の様子も例年とは異なるようですが、国内旅行をすると日本人よりも外国人のほうが多くて、「私はいつの間に海外旅行をしていたんだ?」となってしまうこと、ありませんか?


日本政府観光局 (JNTO) 発表統計によると、2018年の国別訪日外国人は韓国・中国・台湾・香港がおよそ4分の3を占めているようです。


隣国の方々が日本に興味を持ち、実際に来てくれることは大変ありがたいことなんですが、そうした外国人観光客の振る舞いに対して疑問を持ったことも1度や2度ではありません。

中国という国について、個人的な体験だけで偏った見方をしたくない、そう思ってこの本を手に取りました。


この本は今後の中国を担う「80後」という人々の実態を中心に、63のキーワードを使って現代中国を分かりやすく「解体」してみせます。


「80後」とは一人っ子政策が開始された1979年以降(1980年代)に生まれた人々のこと。
一家の一人息子・娘として大事に育てられ、中国の高度経済成長を目の当たりにしたために親世代とは異なる価値観を持っています。


豊かな生活を謳歌する若者がいる一方、世襲制のために一生貧しく生活せざるを得ない人々が多くいるという現状。

日本の「格差」とは根本的に異なり、出自を覆して生きることはほぼ不可能なんですね。
そうした中国社会の仕組みを知ることが出来ます。


この本は2011年に執筆されているので、情報は少し古いのでしょうが、
「中国」を知る上で良い入門書となるでしょう。

ニュースで報道される「中国」とも、観光地で目にする「中国人観光客」とも違う、リアルな情報が詰まっています。


一時は家電製品、その後はドラックストアで、また最近はマスクを「爆買」する中国人の姿がよく報道されていましたよね。

そうした行動はしばしば否定的な感情とともに話題に挙がることがありますが、その「爆買」も単なる成金趣味ではなく、必要に迫られて大量購入している人々もいるようです。


中国について悪い印象を持つのは誤っている、ということではありません。

けれども、(適切な表現かどうか分かりませんが)偏ったイメージを付加しやすい国だと思います。

それは発信者も受信者も同様です。

身の回りにある情報だけで「中国」を批評する前にぜひ読んでほしい一冊です。