正直読書

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「幻惑の死と使徒」と「夏のレプリカ」を交互に読んでみた

幻惑の死と使途 (講談社文庫)

幻惑の死と使途 (講談社文庫)

  • 作者:森 博嗣
  • 発売日: 2000/11/15
  • メディア: 文庫

夏のレプリカ (講談社文庫)

夏のレプリカ (講談社文庫)

  • 作者:森 博嗣
  • 発売日: 2000/11/15
  • メディア: 文庫

一体なにが起きてしまうのか?

森博嗣のS&Mシリーズ6、7作目。とても斬新な作品である。
「幻惑の死と使徒」は奇数章、「夏のレプリカ」は偶数章しか存在しない。


これは、両作品の事件が同時期に起きたためで、時系列順に追っていくと、「幻惑」→「夏」→「幻惑」……と、2つの事件を同時に読み進めなければならない。
これでは大変なので、森博嗣の粋な計らいにより、2つの事件は別作品として収められ、別々に読んでも成立するようになっているのだ。


もちろん、このまま作品ごとに読むことに、何ら問題はない。
しかし、既読作品ということもあって、私は2作品を同時に読みすすめることにした。

一体なにが起きてしまうのだろうか?

結論から言うと・・・

正直、2作品を同時に読み進めるに値するメリットというか、刺激はそこまでない。
2作品を同時に読み終えた後、改めて1つずつ読み返してみたが、(当たり前だけど)圧倒的にこっちの方が読みやすいし、事件の全貌を把握しやすい。


なので、初めてこの作品を読む人はぜっっっっっっったいに順番に読んでください。
森博嗣の言うことを守ってください。


それに、2作品を同時に読むことに、過度な期待を持ちすぎてもいけない。
同時期に起きた事件といっても、それぞれが独立した事件である。
思いもよらないリンクとか、派手な演出を待っていてはだめなのだ。

再読した人向けの楽しみ方

じゃあ同時読みがつまらないのかというと、そうでもない。
時系列が整っているので、ちょっとした一文が繋がっているのが面白い。


たとえば、「幻惑」で何か大きな出来事に遭遇した後の「夏」では、萌絵ちゃんが疲れている、とか。
直接事件に関係のないところばかりだが、「幻惑」であれがあったから「夏」でこうなるのね(逆も然り)、みたいな。


充足感というのか、自己満足に近いけれど、ちょっとマニア的な楽しみ方ができるのも事実だ。


Kindleはページ数が出ないので実際のところは分からないけれど、奇数・偶数章のページ数も同程度な気がする。
どちらかの作品に偏ることなく、バランスよく事件が進んでいくのは、読んでいて何となく安心するものだ。


作品自体は1つで完結しているが、2作品同時に読んでもちゃんと成立するようになっている。
あらためて、森博嗣の構成力の凄さがわかるなあ…。


それぞれの作品の感想はまた次回。