正直読書

本のこと、日常のこと。司書の勉強中。

いくつになっても、赤い夢の住人になれる。「怪盗クイーンはサーカスがお好き」

はやみねかおる先生の怪盗クイーンシリーズ第一作目。
面白い…。青い鳥文庫からしか刊行されていないのが不思議…。


怪盗クイーンとは、誰よりも強く、美しく、そして怠け者という、最高にイカした怪盗である。
ちなみに性別も年齢も不明。

溢れるような銀髪に、微かに灰色がかった瞳、はっとするような白い肌、神の美しさと呼ばれる顔面。
そして最強の刺客もアッサリと倒してしまうという、規格外の強さも魅力だ。


今作は、世界トップクラスの特殊技能を持ったサーカス団との戦いが繰り広げられるが、全ての技能においてクイーンが上回るというミラクルな現象が起こる。


ちなみに二作目でも最強の暗殺者集団と戦うが、ここでもクイーンがストレート勝ちを収める。



捻くれてしまっている人は、主人公があまりにも強いと萎えてしまうこともあると思う。
私はそういう人間だ。


でも、クイーンだけは違うんだ。
あまり見たことはないけど、アメコミを見ている感覚に近いのかもしれない。


Fooooooo!!!!!!最高にcoolだぜ!!!!!!!
クイーン!あんたは最高だ!おい、お前もそう思うよな!


そして会場中に響き渡るwe are the champion―――








どんなに強い敵が出てきても、きっとクイーンは大丈夫。
そうやって、子どものように、純粋に信じることができる。
クイーンに陶酔し、物語に没頭することができる時間。これを幸せというのだろう。



登場人物の話に戻ろう。
クイーンが素晴らしいのは先に述べた通りだが、相棒のジョーカーとRDも良い。
破天荒なクイーンのストッパーを自負しているが、彼らは彼らで一般人とはかけ離れた存在だ。
時折みせる天然ボケや、シリアスな過去を想起させるシーンも相まって、非常にチャーミングな存在である。


それに、クイーンと戦うことになるサーカス団や、クイーン逮捕を掲げる警察官、事件を追う新聞記者などなど、「敵なのになんか素敵!」なキャラクターしかいない。


そんな感じで、大人も魅力してしまうほど懐が深いのが本シリーズである。


はやみねかおる先生は、作品の世界観を表す言葉として、「赤い夢」というワードを使う。
赤い夢に魅了される者は、すべてその住民だ。


怪盗クイーンシリーズを再読したのは最近で、10年以上のブランクがあったのだが、そんなものは消えてなくなっていた。


大人になっても、赤い夢に戻れるんだ―――。
私はずっと、ここの住人だったんだ―――。


ありがとう、クイーン。
ありがとう、はやみねかおる先生。


これからも末永く。