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おすすめされた本を読んでみた「怪盗探偵山猫 月下の三猿」

怪盗探偵山猫 月下の三猿

怪盗探偵山猫 月下の三猿

  • 作者:神永 学
  • 発売日: 2016/09/30
  • メディア: 単行本


Twitterフォロワーさんに教えてもらった本。
神永学の本は「心霊探偵 八雲」以来。相変わらずのスタイリッシュさであった。


ちなみにこの本はシリーズ5作目。
最近は仕事が溜まってオーバーフロー気味だった私。
突如現れた束の間の休日に浮足立っていたのか、なぜか半端な巻を手に取ってしまった。


しかも、次の6作目でシリーズは完結するという。
いきなりトップスピードの物語に途中乗車する形になったが、すんなり入っていくことができた。

かっこよさのど真ん中

「八雲」でも感じていたが、神永学は「こうだったらカッコイイよね」を全て回収していく作者だと思う。


山猫は言ってしまえば窃盗犯だが、その技術は卓越していて、時には冷徹とも言える判断力や洞察力を持ち合わせていながら、ハートフルな一面もある。

これまでの犯行で得た巨額の富を持て余し、片手間で複数のバーを営み、蠱惑的な雰囲気を纏う女性と訳有り気な会話を楽しむ。

ビジュアルについては本作では言及されていなかったが、人並み外れた美貌の持ち主であるはずだ。

持てるものは全て持った、完全無欠ヒーローである。


かっこいいのは山猫だけではない。

ヤクザの父親を持つ女子高生、飄々とした雑誌記者、復讐に燃える刑事などなど、登場する全てのキャラクターが魅力的に描かれている。


きっと、シリーズの他作品では、それぞれの人格形成に影響を及ぼした出来事がきちんと描かれているのだろう。

不意によぎる回想シーンもあいまって、登場人物を理解したい、何があったのか知りたいという好奇心が頭を擡げる。


現在、過去、全ての要素が組み合わさって、「かっこよさ」「スタイリッシュさ」全開の神永ワールドを構成している。


唯一、スタイリッシュな雰囲気とはかけ離れていた細田にもちゃんと見せ場があるんだもんなあ、流石だよなあ。

その他の感想

万事休す!というタイミングで山猫が登場する時は、何故か音程の外れた鼻歌がセットのようだ。
ニュアンスはきっと違うんだろうけど、この部分だけ、はやみねかおる夢水清志郎がよぎった。


ドラマ版では、亀梨和也が山猫役だったようだ。
納得のキャスティング。

映像化したら映えそうな場面が多い。
何となく、神永学はクリエイターとして、自分の頭の中で映像を作って、それを言語として翻訳しているのかな、と思った。何となくだけど。


この本をおすすめしてくれた方は、佐藤究の「QJKJQ」もお好きだという。

佐藤究だったら「Ank: a mirroring ape」を激推しする私だが、確かに。「山猫」が好きな方はきっと「QJKJQ」も気にいるだろう。納得。