正直読書

本のこと、日常のこと。司書の勉強中。

シンプルに面白い!「話を聞かない男、地図が読めない女」

どんな本なのか

性別についての話題は、何かと話が大きくなりがちである。
はじめに、この本がどんな本なのか、そしてこの本に対する私のスタンスを示しておこうと思う。


2002年、オーストラリアの夫婦によってほぼ自費出版の形で発表された。
様々な論文や、専門家へのインタビュー等を通して集めた膨大なデータを分かりやすく、かつユーモアたっぷりにまとめた一冊だ。



色んな場合において、「性別」という明確な境界線を引かないことがメジャーとなっている昨今であるが、本書はまず「男と女は違う」という前提のもとスタートする。


本書によれば、コックピットに入るクルーの98%が男性なことも、政界に女性が少ないことも、脳のつくりが違うことに起因する。
男女の脳は明らかに違うつくりになっていて、それぞれ得意なことも違うのだ。


パイロットは高度な空間能力が求められる業種であるし、市民のリーダーとなるには統率力や支配欲が必要だ。
それらは男性が動物を追っていた頃、狩猟民族の名残として男性の脳に根付いている能力なのだという。


つまり、一部の業種に男女の偏りがあるのは、特定の性が優位となっている社会のせいではなく、男性と女性で性質が違うからだ。



ここまで読んで何か不快に感じるような方には、本書をおすすめすることができない。
そうではない方は、ぜひ読んで欲しい。


20代女性の私は本書の論旨を概ね受け入れているし、面白いと感じた。
少し下ネタが多いように思うけれど、「性」を主題にしている以上、避けられない話題であることは間違いない。


ちなみに、本書が発表されたのは2002年なので、今から19年前ということになる。
そのため、収集したデータは最新のものではないし、反証もあるかもしれない。
しかし、私がこの本を読み、感想を述べるにあたり、この本が現在どのような評価を受けているのかは一切見ていないことを申し添えておく。

正直な感想

私はこの本を読んでよかったと思っている。
男女は違うということを突きつけているにも関わらず、悲観的ではないからだ。


異性交流は、異文化交流と似ているという。
たとえば海外旅行の際(行きたいなあ…)、その土地の文化や歴史、国民性などを理解したり、カタコトの言葉を話してみたりすると楽しい。


男女の場合も同じで、まずは「違う」個性を認めることが必要なのだという。
これは性別に関係なく、人とうまくやっていくために大事なことだ。


私も経験があるが、相手に失望したり腹を立てたりするのは、期待していた反応でなかったときだ。
「自分がこう感じたのだから、相手もこうしてくれるはずだ」という見返りを求めてはいけないし、違うことに対して、すぐに拒否してはいけない。


「どうして相手はそういう反応をしたのか」を考える際に、この本の知識は本当に有効だと思う。



こういう類の本にしては、随分読みやすい。
使われている言葉がシンプルだし、論旨がはっきりしているからだ。


それに、随所に散りばめられている「あるあるネタ」が本当にあるあるで笑ってしまう。
この本に登場する男女は大体私とパートナーに当てはまるし、同じような話をよく聞く。


男女の脳の仕組みを分かりやすく示した本書は、異性に関するガイドブックであると同時に、私の取扱説明書でもあった。


何も言わずにパートナーにこの本を渡して、感想を聞いてみたいものだ。